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「任侠山口組」トップの襲撃事件はこうして起こった

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「任侠山口組」トップの襲撃事件はこうして起こった
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分裂と疲弊の狭間で

指定暴力団「住吉会」の西口茂男総裁(88)が、9月12日午前2時頃、都内の病院で亡くなった。1991年3月、暴力団の連合組織だった住吉連合会を発展的に解消して住吉会が設立され、会長に就任したのが西口氏だった。以来26年、住吉会に君臨、決して表に出ず、静かな形で統治してきた。

西口の死の約8時間後、指定暴力団「神戸山口組」から離脱した新組織「任侠山口組」の織田絆誠代表を狙った襲撃グループが、ボディガードの傘下組織幹部・楠本勇浩氏を射殺して逃走した。犯人は発見されていないものの、目撃情報などから神戸山口組傘下の三次団体幹部らと目されている。

形は違うが、12日に起きた二つの出来事は暴力団社会を揺るがせた。そして、「液状化の果ての野合」という暴力団の行く末を暗示している。

「早くから準備していた」

東京・高円寺は、中央線沿線上の高級住宅街ながら、商店街は下町的活気に溢れ、「高円寺の阿波踊り」などでも知られる。ただ、暴力団社会では、「高円寺」といえば、そこに長く居住してきた西口氏のことを意味した。

住吉会幹部以外に、「生」の西口氏に接触した人はほとんどいない。暴力団事情に精通する実話誌でも、西口氏の「生の声」を掲載することはなく、写真も近影はない。どんな人なのか。

「面倒見のいい昔気質のヤクザ。ただ、策士でもある。どう差配すれば、住吉会が自分の思うように、いい形で運営できるかを常に考えている。その見方がブレないから、住吉の連中は、『高円寺』に行って相談する。それが当たり前になって求心力は高まり、西口総裁は終生、住吉に君臨することができた」(暴力団担当の元警視庁幹部)

住吉会の会長は関功氏である。14年4月、福田晴瞭会長が退任、関氏が新会長となったが、福田氏に大きな落ち度があったというわけではない。人事は西口氏の意向であり、台頭する福田氏を子分のいない「ひとり親方」の住吉一家七代目に封じ込めるとともに、自分のいうことをよく聞き、西の山口組とも如才なく付き合える関氏を後継とした。

住吉会の象徴だった西口氏の死によって、住吉会は間違いなく揺らぐ。最大実力者といわれる幸平一家の加藤英幸総長など、関氏と折り合いの良くない幹部は少なくなく、西口総裁という“重し”が取れれば、山口組のように割れる可能性がある。だが、それが得策でないのは、三分割の果てに疲弊と困窮の度を高めつつある山口組の“惨状”が伝える。それを思えば、「住吉の旗」のもとで、生き長らえるという道を選択するのだろう。

他の広域暴力団も同じである。12日は、住吉会だけでなく、もうひとつの関東の暴力団の雄である稲川会、そして山口組からも多数の最高幹部が、弔問のために「高円寺」を訪れた。そのなかには山口組の司忍六代目の姿もあった。司六代目が「高円寺」を訪れるのは初めてである。両組織の間に親戚関係はないが、双方、平和共存路線を続けることに異論はない。

一方で、近親憎悪的なケンカはやまない。任侠山口組の織田代表を狙ったのは、明らかに井上邦雄神戸山口組組長と織田代表との「親子ゲンカ」が原因だった。襲撃犯グループについて、神戸山口組関係者は次のように予測する。

「やったのは、井上組長のためなら体を張る岡山の組織の幹部。神戸山口組を割って出てからの織田の言動が、とにかく許せなかった。(襲撃犯は)既に組を破門されている。偽装破門が考えられるわけで、早くから準備していたということ」

分裂の究極の原因

もともと織田代表は、実話誌を中心とするマスコミ人気が先行した人である。精悍な顔つきにノーネクタイのスリーピースがトレードマーク。神戸山口組の結成以来、全国各地で挑発的な活動を繰り返し、六代目山口組を刺激、それをまた恐れなかった。

そんな織田氏が、井上組長が率いる山健組の中核メンバーを引き連れて独立、任侠山口組を設立したのだから井上氏は驚いたが、なによりショックだったのは、自分の統治方法をことごとく否定、それを記者会見やマスコミインタビューで繰り返したことだった。

織田氏は、①甚だしき金銭の吸い上げ、②出身団体幹部の身びいき、③進言諫言を受け入れない独善運営、という三つをあげて井上組長を批判した。「割って出る」という行為によって、まず「親」の井上氏を裏切った織田氏は、山口組には珍しいマスコミ利用によって、「親の顔に泥を塗った」(神戸山口組関係者)ことになる。

会見は独立時にとどまらなかった。山口組分裂から丁度、2年経った8月27日、任侠山口組は2度目の記者会見を開き、「独立の知られざる内幕」をオープンにしつつ、攻撃の矛先を再び井上氏に向けて、辛辣に批判したのだった。

井上氏は表立って反論しないが、側近や周辺には、裏切った織田氏への憎しみを口にすることが少なくない。その思いを、今回、「井上命」の組織の人間が、代弁したということなのだろう。

分裂の究極の原因はシノギの枯渇である。10万円、20万円の会費が払えない。食えないなら意味がないと、代紋を捨てる。暴力団の構成員数は、年々、減っており、寄って立つ基盤が崩れ、液状化が進んでいる。そして今回、顔見知りの分裂ゆえ、憎しみも倍の近親憎悪状態で、殺人にまで至った。

かつてのように、シマや利権や分け前をめぐる争いなら、血を流したあとの報酬を期待できたが、意地とメンツの争いにはそれがない。いずれ終息するものの、その先には疲弊し縮小した組織の姿しかない。

それがわかっているから誰も争わない。住吉会の重鎮・西口茂男氏の死が、「重しを失った後の分裂」に行き着かないと予測されるのはそのためで、今後も進展するのは他組織も含めた衰退へ向けての野合。12日は、そうして図らずも「暴力団の今」を伝えたのである。

出典:講談社 (執筆者)伊藤 博敏ジャーナリスト

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